「口付けを交わそう」

 

「あ、あれは何かしら、ヒイロ」

彼女の言葉と視線につられてそちらへ顔を向ける。

その時。

頬に触れた暖かく柔らかな感触に目を見張り、彼女へ顔を向ける。

彼女は頬を染め、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべ、俺を見つめていた。

「これくらいは構わないでしょう?」

「・・・・・・」

「あなたが奥手なのは知っているけれど、少しくらい、手を出してくれても、

わたくしは構いませんのよ?」

「・・・ほぉ」

「どうして呆れた顔をするの?」

彼女が頬を膨らませる。

その腕を強引に引っ張る。

あっ・・・という短い声を上げる口を、そのまま塞いだ。

自分のそれで。

自分で誘った手前か抵抗は無かった。

ただ、困ったように目を泳がせている。

それが少し気の毒で、仕方なく、解放した。

彼女は怒ったように眉を潜め、俺を睨んだ。

「こういうのは困ります。心臓に悪いから」

「だったら、どうすればいい?」

「・・・優しいキスをして」

「・・・了解した」

 

Fin

 

「あとがき」今回は、「か行」の「く」ですね。
題名を先に置いてから書こうと思ったんですが、題名を置いたまま、書けずに数日放置してしまった。
先回もテーマが「キス」だったので、さすがに2回続けては辛いものがありますね。
ああ、もう、何が何だか。難しいのぉ・・・。

さて、次回は「け」ですね。け・・・け・・・結婚・・・か?

ああ、どうしようかなぁ。
2004.10.28希砂羅