「俺のすべて」 


守ると約束した。

あの日から、もう2年が過ぎた。

戦いは終わり、平和と呼ばれる日々に身を置く事に、ようやく慣れてきた。

 

「戦争」という血生臭い戦いは終わった。

だが、彼女はまだ、戦っている。

彼女が掲げる信念を、貫くため。

 

 

久しぶりの休みだというのに、彼女は仕事の資料を見ながら、難しい顔をしていた。

けれど、やはり仕事の疲れには勝てない。

いつしか、目は閉じられ、座っていたソファに身体を沈め、眠り込んでしまった。

 

ここでは風邪をひくと、眠る彼女を抱き上げ、ベッドへ運んだ。

その微かな揺れに、彼女が薄っすらと目を開ける。

「すまない、起こしてしまったか」

素直に詫びると、いいえ、と彼女は微笑んだ。

「眠ってしまったのね、わたくし」

「連日の会議で疲れているんだ、仕方ない。今はゆっくりと眠れ。貴重な休みだからな」

「ありがとう・・・」

彼女はそう言って、ゆっくりとこちらへ手を伸ばす。

意味を悟った俺は、その手を握った。

彼女は安心したように、目を閉じ、眠りへと吸い込まれていった。

 

 

彼女の寝顔を見つめ、同じ時間を過ごせる、今、この時が俺にとってのすべてだと、

いつしか彼女へ伝えよう、そう心に誓った、ある日の昼下がり。

 

Fin 

「あとがき」
今回は、「あいうえお作文」の「お」です。
「俺のすべて」という言葉がポンと頭に浮かんだので、最初からそれを題名に置いて書いていきました。
中身とかは考えずに、浮かぶ言葉を打っていった感じですね。
小説を書くとき、その情景というか、その映像が頭の中にあるので、それを文章に変換していくわけですね。
単純に言えば、そういう作業なんです、少なくとも私の中ではね。
だけど、それが上手くいくときもあれば、逆に上手くいかない時もある。
そういう意味では、すんごく頭を使います。

 次は「か行」かなぁ、なんて思ったりして・・・。 

2004.10.24希砂羅