「Lovers Cooking」

 

普通、恋人が作った料理と言えば、もっとワクワクするものではないだろうか。

そう思うのは俺だけか?

 

目の前に並ぶ料理の品々。

料理は見た目も大事。

そう思うのは俺だけか?

いや、見た目は悪くともおいしい食べ物というのも存在するのも事実だが・・・。

だが、これは“それ”とは次元が違う気がする。

 

どれでもいいから、早く一口でも口に運ばなければ・・・。

そう思うのだが、何故だろう。

手が動かない。

 

「どうしたのですか?」

 

キッチンの片づけを終えた彼女が隣の空いた椅子に腰を下ろす。

「・・・嫌いなものでも入っていましたか?」

「いや・・・。その・・・」

上手い言葉が出てこない。

どうしようか。

「今回は、きちんと味見をしましたわ。ちゃんとおいしかったわ」

彼女が苦笑しながら言う。

「そうか・・・」

なら、安心か・・・。

そこで安堵してしまう自分もまた、あれだが・・・。

「確かに、見た目は少しあれですけど・・・。

でも、今回はきっと、あなたのお口に合うと思うの」

「・・・ああ」

と、頷きつつも、手は動かない。

どうしたのだろうか。

自分の手を見つめ、首を傾げる。

そんな俺を見て、彼女は今にも泣き出だしそうだ。

いよいよ困った。

どうしようか。

「ごめんなさい」

彼女が頭を下げる。

「トラウマになってしまったのね。前回の料理があまりにも、あれだったから・・」

彼女がシュンと肩を落としてしまった。

途端に後悔する。

恋人がせっかく自分のために料理を作ってくれたのではないか。

それを喜んで食べるのが恋人ではないのか?

そう、思い直した。

彼女の誠意に応えようと。

スプーンを手に取り、スープ皿へと手を伸ばす。

そして、一口。

・・・・・・

何と、表現しようか。

まずくはない。

飲めないことはない。

だが・・・。

これは一体何のスープなんだろうか。

それほど、味が無い。

インパクトが無い。

さて、何と答えようか。

彼女にじっと見つめられ、固まる俺。

・・・・・・

しばし、考える。

・・・よし、答えは決まった。

 

「どうですか?」

「・・・まずくはない」

「・・・そう、ですか・・・」

曖昧な答えに、彼女は安堵のような苦笑いのような、複雑な顔をした。

 

何とか修羅場にはならなかったが、この日以来、

彼女から食事の招待を受けることは無かった。

 

・・・俺が悪いのか?

 

Fin

 「あとがき」
今回は「ら行」の「ら」です。
何なの?これ・・・。
以前、リリーナの作った料理をヒイロが食べる話を書いたのですが、これはその続編みたいなものです。
何か、中途半端だねぇ。もう少し続けようかと思ったんですが、だらだら書くのは好きじゃないので、
まあ、いいやっと、終わりにしました。

修羅場になった方が楽しいのかしら?
 さて、次回は「り」ですねぇ。
2005.1.13 希砂羅