「耳元で囁くは・・・」

 

絡まる指先。

伝わるぬくもりに、心は温かい気持ちでいっぱいに満たされる。

指先一つで、あなたは私の心を簡単に奪ってしまう。

あなたにその自覚がないのが、少し憎らしくもあるけれど。
 

ぎゅっと背中から抱きしめて、耳元で囁く言葉は、愛と呼べるのか・・・。

だって、あなたは囁くのです。

何度も、何度も。

静かな声で。

わたくしの名前を。

 

それは、どんな愛の言葉よりも、わたくしの心を心地よくくすぐることを知っていて

あなたは何度も繰り返すのでしょう?

その、他愛のない戯れを。

 

 

抱きしめた細い体。

けれど、柔らかいその身体。

抱きしめた途端、ふわりと香るその髪。

そのどれもが、俺の身体を、心を、熱くする。

 

耳元に唇を寄せ、何かを囁こうとするも、

上手い言葉が浮かばず、

結局囁くのは、彼女の名前。

 

けれど、それでも彼女は楽しそうに微笑う。

くすぐったいのか、名前を囁くたびにびくりと震えるその仕草に

思わず笑い出す俺に、彼女は口を尖らしながらも、目は笑っている。

 

そんな他愛のない戯れを

飽きることなく繰り返す二人。

 

それは二人だけの至福の時。

 

何物にも変えられない、幸せな時間。

 

Fin

 

「あとがき」
今回は、「ま行」の「み」です。先回の「ま」から少し間が空きましたが、
その間、別に悩んでいたわけではなく、ただ何も思いつかなかったので書きませんでした。
ので、今回は、即興、というか、あんまり深いことを考えずに書いてみました。
このシリーズは、何だか、リリーナの独白?みたいのが多いので、
今回もそうなるかなーと思ったんですが、そうすると短くなってしまうので、ヒイロver.も書いてみました。
何だか甘い話ですなぁ。二人の世界〜。

さて、次回は「む」ですね。
うわお、難しい・・・。
2004.12.28 希砂羅