「にわか雨」
窓から外を見ると、雨が降っていた。
その音に気づかぬほど、自分は仕事に没頭していたのか。
そんな自分に呆れる。
“たまには休め”
そんな彼の不機嫌な声が聞こえてきそうで、ふっと可笑しくなった。
朝は確か晴れていた。
にわか雨。
きっとすぐに止むだろう。
激しい雨ではない。
ぱらぱらと細かい雨だ。
きっとすぐに止む。
そう思いはするけれど、雨を見ると、どうしても寂しい気持ちになる。
外に出ると、雨が降っていた。
傘を取りに戻るのが面倒で、そのまま歩き出した。
“風邪をひいたらどうするんですか”
そんな彼女の少し怒った声が聞こえてきそうで、思わず可笑しくなった。
朝は晴れていた・
にわか雨。
激しい降りではない。
きっとすぐに止むだろう。
そう思いはするが、雨の冷たさに変わりはない。
雨が止んだら、会いに行こう。
そんな面倒なことはしない。
雨が降ろうが晴れていようが、会いたい時に会いに行けばいい。
それに今日は、にわか雨。
きっとすぐに雨は止む。
そう思いながら、
彼女は彼に、
彼は彼女に
会いに行く。
優しく降る雨の道を・・・。
Fin
「あとがき」
今回は「な行」の「に」ということで、「にわか雨」。
これを書くにあたり、ショックなことがありました。
それは・・・。一度、Finまで書いたんですよ、実は。
ところが、手違いで、全部消えてしまったのです。もう、唖然としてしまいました。
気づいたのが次の日だしね。もう、仕方なく一から書き直しですよ。
前に書いたのは全然覚えてないので、最初に書いたのと内容はたぶん違うと思う。いや、全然違うな。
こんなショックなことはないわ。やっぱり、バックアップは大切ですね。それを思い知りました。
この「にわか雨」。ただでさえ難しいテーマだったのに、
また書く羽目になって、いろいろと大変な思いで書きました。
ということで、次回。
2004.11.26 希砂羅