小話集*****その1
2005.2.〜3.13日記書き込み分収録


2000HIT 記念SS

「扉」


愛しています。
そう告げたのは、決して場の雰囲気に流されたからでも、
口にしてしまったお酒で酔いが回ったからでもなく、
わたくしの
嘘偽りの無い、
真実の気持ちです。

あなたは目を見開いてわたくしの顔を穴が開くほどに長い間見つめていたわね。
その後、わたくしの手にあるグラスを見た。
だから、そんな怖い顔をしたのね。
酔っていると。
お酒のせいで変なことを口走ったのだと。
あなたはそう思ったのでしょう。

悲しいわ。
わたくしは嘘をつくのが下手だと
あなたが一番良くご存知だと思っていたのに。
それは、わたくしの思い過ごしだったのでしょうか。

「お酒は一口だけです」
言い訳のようだけど、嘘は言いたくない。
お酒のせいにはしてほしくない。
彼は何も言わない。
まるで、言葉を探しているように、眉を寄せ、視線はわたくしを通り越し、壁や窓を行ったり来たり。
「酔っては、いません。嘘で、あんな告白をするほど、わたくしは馬鹿ではないわ。酔っていたら・・・きっともっとすごいことをしていたかもしれませんけど」
わたくしのこの言葉に、彼は困った顔をした。
「・・・お前が、嘘が下手なことくらい、知っている」
ようやく彼が口を開く。
まるでその口調は、言い訳のよう。
「でしたら、信じてくださるのね?わたくしの気持ちを」
「・・・俺は、何を返したらいい?」
「え・・・?」
「お前のあの言葉に、俺は何て返したらいい?」
「それをわたくしに聞くのですか?」
「俺は・・・知らない。好きな女に、何て言葉をやればいいのか」
そこまで言って、彼はハタと止まった。
「それ以上の告白は、いりませんわ」
彼はしまった、という風に顔をしかめていたけれど、わたくしの言葉に、?というマークを浮かべた顔をした。
「わたくしも、あなたが好きです、ヒイロ」
わたくしの言葉に、彼は自分の言葉がわたくしにどう影響を与えたか、気付いたようだ。
それからは・・・冷たく重かった空気が、一気に和らいだ。

素直になることは、難しいけれど、一度その扉を開いてしまえば、後は簡単なこと。
そっと、背中を押してあげればいい。
自分で、自分の背中を。

その扉の向こうに、輝く未来が待っている。


Fin


「あとがき」
2000HIT、ありがとうございます!!(自分でキリ番を踏んでしまいました・・・汗)
せっかくのキリのいい数字ですので、記念にSSでも書こうかな、と突然思いつき、書いてみました。
久しぶりに真面目に(そうは思えない?)書いたので、難しかったです。
こんな話であれですが、読んでいただけると嬉しいです。
これからも、希砂羅をよろしくお願いいたします。

2005.3.13 希砂羅

「見えないもの」

心は見えない
だけれど
感じることは出来るのです

あなたの心に眠る
悲しみや痛みを

Fin

「あとがき」
これが全てか・・・。


「ため息」

彼女のため息が聞こえた
少し憂いを秘めた彼女の横顔を見つめる
彼女が視線に気付きこちらへ顔を振り向かせる
微笑む
それはまるで泣いているようにも見える
それがあまりに美しくて
俺は感嘆のため息を落とした

Fin

「あとがき」
彼女が落としたため息と彼が落としたため息の違い、わかります?


「葛藤」


愛などいらない

愛して欲しい

優しさなどいらない

優しさがほしい

殺したい

生きて欲しい

側にくるな

側にいてほしい

何もいらない

お前だけがほしい

Fin

「あとがき」
難しいね・・・。




「繰り返し」

彼女に触れたい

その手に
その髪に
その素肌に

腕を伸ばしては
引っ込める

その繰り返し

Fin

「あとがき」
あぁ、もどかしい・・・


「見つめて」

気がつけば
目が彼を追っている

何故だろう
浮かぶ疑問に辿り着く答えに
一人顔を赤くする

Fin

「あとがき」
んんー・・・恥ずかしい




「天使 パート2」

「俺が天使だと?」
「・・・はい」
「・・・翼の折れた天使か?」
「いいえ」
「では、汚れた天使か?」
「・・・優しい天使です」
彼女の言葉に絶句した。

Fin

「あとがき」
意味不明・・・。
深く考えない方が身のためです。暖かく笑ってやってください。




「天使」

「ヒイロ。私はあなたの天使になりたいわ」
「天使?」
「あなただけの天使になりたいわ」
「・・・もうなっている」
「え?」
「お前は俺にやすらぎを与えてくれる。それが天使の役目だろう?」
「・・・はい」

Fin

「あとがき」
意味不明・・・。




「愛か欲か」

 耳に掛かる熱い息に身体が震える。

「寝たのではなかったの?」

「・・・目が覚めた」

「だからって・・・あんっ・・・」

耳を甘噛みされ、思わず声が漏れてしまう

目が覚めたなんて・・・嘘・・・

目が覚めたのは・・・欲でしょう?

Fin

「あとがき」
最後の「目が覚めたのは〜」の続きを少し書いたんですけど、書くとダラダラと長い文になってしまうなぁと思い、潔く切り捨てました!



「愛と欲」

重なる唇。
溶ける熱。
苦しいくらいに続く深く甘い口付けに、どこまでも溺れていく。

このまま溶けてしまいたい・・・。
熱い唇、絡まる吐息、絡まる互いの舌・・・。
限られた密室の中で、互いの腕を互いの身体に絡ませ・・・。

熱くなった身体はそのままに、さらに互いに熱を上げていく。
乱れた服から零れた素肌に熱い唇を押し付け、刻々と刻むのは、愛の証か。

愛撫の隙間から名前を呼べば、嬉しさに、心地よさに微笑を返し・・・。

愛と欲。
このまま溶けてしまいたい。
このまま一つになれたなら・・・。

繋がるだけでは嫌・・・。
互いの全てが欲しい。

愛して欲しい。
そんなことを望まなくとも、自分から愛せばいい。
自分から求めればいい。
自分からぶつかっていけばいい。

言葉など無くとも、互いの熱で解りあえる。
その熱い唇で、熱い身体で、熱い吐息で・・・。

互いに身体を絡ませ、どこまでも上り詰めていく。

それが、愛でも欲でも、構わない。
互いに互いを愛せばいい。
互いに互いを求めればいい。

全ては、その気持ちのままに・・・。

Fin

「あとがき」
 うんと、本当は、キャラの名前を出して、いつもの小説のごとく書こうと思って書き始めたんだけど、なぜか、こんなものに・・・。
 はい、全ては皆様の想像力で膨らませて、ストーリーを作っていってくださいませ。自分のイメージは、もちろん、ヒイロとリリーナですが、あえて名前は出していないので、この2人に限定することはありませんよ。他のカップルもお好きな方も中にはいらっしゃるかもしれないし。
 少し、ポエムっぽいですかね、小説というよりは。こういう文も、実は好きだったりする。久しぶりに第3者的に書いたかな、という感じです。
 いかがなもんでしょうか。




「その死が見せるもの パート2」

彼は死んだ
私の手の届かぬ場所で
最後まで
その顔を私に見せることなく

最後まで優しい人
悲しいくらいに優しい人
切ないくらいに優しい人
苦しいくらいに優しい人

あなたが最後に私にくれた
大切な大切な新しい命

それは
二人だけの宝物ね

Fin

「あとがき」
リリーナバージョン。悲しいけど、暖かいかな。ヒイロの優しさが、リリーナに伝わってよかった。やっぱり、2人の心は繋がっているんだね。




「その死が見せるもの」

彼女が死んだ
とてもあっけなく
とても簡単に

こんな死もあるのだと
妙に冷静になれる自分が嫌だ

彼女の身体は果てても
彼女の心は
彼女の全ては
この胸に眠っている

それはとても大切な
俺だけの宝物

Fin

「あとがき」
2人が別離(死別)する話は書きたくない、と言いつつも、書いてしまいました。
悲しいけど、ヒイロの言葉で、想いで、救われてください。




「髪 パート2」

仕事以外の時、彼女は髪を下ろす。
髪を下ろした方が好きだ。
自分はいつかそう言った気がする。
だからだろうか。
何て勝手に思ったりする。

Fin

「あとがき」
こんなヒイロもありかな、と思います。いつ、どんな場面で言ったんでしょうかね、彼は。




「髪」

仕事以外の時は髪を下ろす。
それは私の習慣。
だって、彼が言ってくれたもの。
下ろした髪が好きだって。
彼は覚えているかしら。

Fin

「あとがき」
かわいいなぁ、リリーナ。恋する乙女って感じ。





「手 パート2」

手に彼女の手が触れる。
ん?と思う前に前にその手は離れていく。
その手を強引に引っ張り握る。
優しく労わるように。
白くて細いこの手を。
暖かいこの手を。
優しいこの手を。
守るのはこの俺だけだ。
だから、離さない。

Fin

「あとがき」
ヒイロバージョン。リリーナバージョンと上手く絡まるように書くのって、結構頭を使うのね。でも、楽しいからやめられないわ。




「手」

勇気を出して手を伸ばす。
彼の手に触れた。
やっぱり恥ずかしくて手を引っ込める。
「っ!」
強引に手を取られる。
暖かい手。
優しい手。
大きい手。
いつまでもその手に包まれていたいわ。
だから、離さないでね。

Fin

「あとがき」
んふ、かわいい。こういうかわいい文も書けるんだな、と新しい自分を発見しました。やるじゃん、私。




「結婚 パート2」

「結婚するか」
彼が言った。
「・・・・・・」
ぽかんと彼を見つめる。
「俺の帰る場所は、結局お前の元しかない」
「家が欲しいの?」
「お前がいる家がな」
「わかりました」

Fin

「あとがき」
短っ!超短っ!前に書いた「結婚」のリリーナバージョンです。
何て短いんだ、と自分でも思いましたが、これ以上は書くつもりはないです。




「結婚」

「結婚しましょう」
彼女が言った。
「・・・・・・」
言葉を無くす。
元より無口だが、ここまで頭が真っ白になることは滅多に無い。
「結婚しましょう、ヒイロ。結婚するべきだわ、私たち」
彼女がさらに追い立てるように言う。
「いつまでこんな風に会わなければならないの。お互い、会いたくて会いたくて仕方がないのに、せっかく時間を作って会っても、帰る場所は違う。いつかは離れ離れになるのよ。耐えられないわ、もう。こんな苦しい思いはもうしたくないの。だから、決断してちょうだい。私と結婚するか、別れるか」
「別れる?」
「別れるのは嫌?」
「当たり前だ」
「でしたら、結婚しましょう」
彼女がにっこり笑う。
「・・・了解した」

Fin

「あとがき」
うふふ。おもしろい・・・。すらすら書ける時ほど楽しいものはない。
強引なリリーナ、半分振り回されてるヒイロ。でも、気持ちは同じだったりする。
よくわからんが、幸せな二人よね。


毎日、日記を書くというのは、大変ですね。・・・というわけで、以前に書いた短編を載せることにしました。




チョコレートはお好き?

「はい、あなた」
妻がにっこりと微笑い、ラッピングされ、リボンの掛けられた箱を差し出す。
「・・・・・・」
何だ?これは・・・。
無言でその箱を見つめる。
そんな俺を、妻は少し驚いたように見つめta後、苦笑した。
「もしかして、今日が何の日か、わかっていないのね?」
「・・・何の日だ?」
「2月14日は、バレンタインデーですっ」
「バレンタインデー・・・。ああ、そうだったか・・・。今日だったのか」
「毎年、この会話をしているような気がするのはわたくしだけかしら?」
「・・・すまない」
「いいのよ。いい加減、慣れなきゃね、わたくしも」
妻は優しく微笑うと
「コーヒーを入れるわね」
と、台所へ入って行った。


少しして、カップを二つ盆に載せた妻が戻って来た。
そして、俺の横に座る。
「開けてもいいか?」
「ええ、どうぞ」
妻の了解を得て、ラッピングを解いて、箱の蓋を開ける。
中には、ハート型のチョコレートが3つ並んでいた。
「今回はね、ブランデーを入れたの。あなた用にね」
「そうか」
「食べてみて」
「ああ」
頷いて、一つ手に取った時、待って、と妻が言った。
「何だ」
「貸して」
「これを?」
手に持っているチョコレートを見る。
「どうして」
「いいから、貸してちょうだい」
「わかった」
釈然としないまま、妻にチョコレートを渡す。
妻は受け取ると、それを俺の口の前に持ってきた。
「はい、あーんして」
「・・・・・・」
これがしたかったのか・・・。
念のため、ヒリオがいないのを確認して、口を開ける。
とても子供の見ている前ではしたくない。
その口に、妻がチョコレートを入れる。
口に入った時は甘いが、一度噛むと、口の中にほろ苦いブランデーの味と香りが広がる。
チョコの甘さとブランデーのほろ苦さが合わさり・・・なるほど、こういうのもいいかもしれない。
と、思ったりした。
「おいしい?」
「ああ」
「良かった・・・」
妻がほっと息をつく。
「毎年、ビターチョコだったでしょ?でも、それも飽きるかと思って、少し考えてみたの」
「味見はしたのか?」
「したかったんだけど、酔うのが怖いから・・・」
「そうだな」
妻は酒に弱い。
本人にも自覚があるようで、付き合いの場でも酒は飲まない。
「でも・・・」
と、上目使いで微笑み、俺を見つめる。
「食べてみたい、か?」
「ええ」
「少量だから、ひどく酔うことはないだろう」
「いいの?」
「ああ」
一つを手に取り、妻の口の前に持っていく。
妻は小さく口を開け、チョコを口に含んだ。
噛んだ途端、少し咳き込む。
「大丈夫か?紅茶を飲め」
「ええ・・・」
妻はソファに背を預け、息をつく。
妻の手に紅茶のカップを持たせる。
紅茶を一口、二口と飲むと、だいぶ落ち着いたようだ。
「落ち着いたか」
「ええ。でも、やっぱりお酒はダメみたい・・・」
「ブランデーは強いからな」
「そうね」
頷く妻を見ながら、ふと、いらぬ考えが浮かんだ。
その考えを打ち消さぬまま、最後に一つ残ったチョコレートへ手を伸ばす。
それを妻が見ている。
チョコレートを口に含み、噛み砕く。
そして・・・。
妻の腰へ腕を回し、引き寄せる。
「あなた?・・・ん・・・ん・・・」
妻の唇に口付ける。
こくり、と流し込まれたチョコレートを妻が飲み込む。
唇を離すと、目を潤ませた妻が少し怒った顔で俺を見つめる。
「酔わせたいの?わたくしを」
「・・・久しぶりに見たくなった。お前の酔った姿を」
アルコールのせいで服の隙間から覗く白い肌が淡く色づき始めている。
鎖骨を指先でなぞると、妻は小さく体を震わせた。
「後悔しても・・・知らないわよ」
そう小さく呟く妻の唇と再び塞ぎ、そのままソファへ体を押し倒した。


Fin


「あとがき」
ぎりぎり、前日に書きました。この夫婦の話を書くと、必要以上にヒイロが狼を化すので、自分で書きながらどきどきしてしまう。何はともあれ、ハッピー・バレンタインですね!私は違うけど・・・。



「Dear.RELENA 」

元気にしているか。
ちゃんと睡眠を取っているか?食事をきちんと取っているか?お前のことだから、また無理をしているのだろう。
 こんなことを書くと、お前はまた笑うのだろうな。だが、何度でも言う。お前のことが心配だから・・・。
 ここ数ヶ月、お前と顔を合わせていない。だから、余計に気になるのかもしれない。だから、許してくれ。一人の男の戯言だと。

 上手い言葉が浮かばない。誰かに手紙を書くのは初めてだ。すまない。俺こそ、変な文章になっているかもしれないが。

 最後に。
俺はお前を信じている。だから、お前を俺を信じていろ。互いの心に、互いの存在が在ることを。

                From.HEERO