「手紙」

 

封をして、切手を貼って、準備は完了。

あとは、これをポストへと投函するだけ。

その勇気を持つまでに、もう少し時間が欲しい。

そんな言い訳を自分にして、ため息をついた。

 

彼はどんな顔でこの手紙を読むだろう。

想像するのが怖くて、目を閉じて首を横に振った。

もやもやする、不安な気持ちを消し去るように。

  

差出人の名前を見て、思わず首を傾げてしまった。

彼女からの手紙。

毎日とまではないが、メールは交わしている。

メールで用件は交わせているはずだが・・・と。

そう思っていたのだが。

書かれている内容を想像することすら皆無だった。

 

けれど、メールでは交わせない用件だったらと、とりあえず封を開けることにした。

折りたたまれた便箋を開く。

そこには、綺麗な文字で文章が並んでいた。

 

 

「 Dera.Heero

 

 お元気ですか?

あなたも私も仕事に追われる日々が続いて、なかなか会うことができませんね。

とても、寂しいです。

あなたも、同じ気持ちでいてくれたら、とても嬉しい。

そう感じています。

二人のお休みが重なる日がなかなか訪れず、また、会えない日々が当分続くでしょう。

メールで交わす会話も、この頃は同じ言葉ばかりになってしまいましたね。

こうして、あなたへ手紙を書くのは、今回が初めてです。

だから、とても緊張しています。

変な文章になっていても、笑わないでくださいね。

次に会える時には、二人でゆっくりと過ごせることを願っています。

 

From.Relena」

 

 

何てことは無い内容。

けれど、そこに書かれていたのは、素の彼女自身だった。

メールでは見たことの無い内容だった。

だから、少なからず驚いた。

自分も、手紙で返事を返すべきだろうか・・・と、悩むことにはなったが。

 

 

今頃、きっと彼の元には私からの手紙が届いている頃だろう。

彼は、どんな顔であの手紙を読んでいるのか。

 

と、いつまでも悩んではいられない。

自分にはやらなければならないことがたくさんあるのだから。

とりあえず、メールをチェックしよう。

と、パソコンを開き、メールフォルダをチェックすると、新着が1件。

差し出人は・・・ヒイロ・ユイ。

マウスを動かす指が震えた。

どきどきと、高鳴る鼓動を抑え、メールを開く。

そこには・・・。

「手紙を読んだ。俺も手紙で返事を出すことにした。2,3日には届くようにする」

思わず、笑みが零れた。

彼が、手紙を書くなんて。

便箋にペンを走らせる彼を想像したら、嬉しくなった。

 

たまには、手紙のいいものね。

と、彼も思っているかはわからないけれど・・・。

 

Fin

 

 

「あとがき」
今回は「た行」の「て」です。というわけで、「手紙」。リリーナからヒイロへの手紙。
最初は、手紙の中身だけだったんですが、何かあんまりに短いし、つまらないので、後から手紙の前後を肉付け?しました。
本当は手紙の内容を「愛のメッセージ」みたいのにしようかとも思ったんですが、書いてみたらこんなものに・・・。

難しいわぁ(・・・毎回言ってるな、このセリフ)。
というわけで、次回は「と」。

次も頑張るわー。
2004.11.21希砂羅