「対したことではないけれど」

 

 

気になることがある。

それは決して、対したことではないけれど。

ただ、気になるのだ。

それは自分だけかもしれない。

だが、知りたいと思う。

 

 

じっと見つめられ、何か用かと問うも、いいえ、と相手は首を横に振り

「何でもありませんわ」

と何事も無かったかのように目の前にある仕事の資料へとその顔を伏せてしまう。

しかし、数分後、やはり、じっと見つめる彼女の視線とぶつかる。

「言いたいことがあるのなら、はっきりと言ってくれ」

「・・・いいの?」

彼女は困ったように笑い、首を傾げた。

「黙って見つめられるよりは、な」

「・・・そう。では、言いますわ」

「ああ・・・」

「ヒイロって・・・美人よね」

「・・・・・・」

「男らしいっていう、意味でもあるんだけど・・・」

返答に困る俺に、彼女は言い訳のように小さく言う。

「美人というのは、普通は女に使う言葉だと思うんだが」

「ええ、そうかもしれない。だけど、すごく整った顔立ちだし、スマートだし、

美人だなって、ふっと思ったの」

「それで、ずっと見ていたと?そういうわけか」

「・・・そうよ。嫌だった?」

「黙って見つめられるというのは、あまり気分のいいものじゃない」

「ごめんなさい」

「・・・まあ、いいが」

「でもね、見ていたかったの。あなたを・・・」

そう言って微笑む彼女に、怒る気も失せた。

 

 

男性に対して、美人だなんておかしいかもしれないと、自分でも思う。

だけど、彼を見つめた時、素直にそう思ったから・・・。

だから、見つめてしまったの。

見つめていたかったから・・・。

 

 

Fin

 

「あとがき」
今回から、「た行」に突入です。
た・・・ね。はい、対したことのない内容でごめんなさい。
だって、思いつかなかったんだもん。
ヒイロって、美人?自分で書いておいてあれですが、美人の類に入るのかな。美少年?うーん、難しいわぁ。
 さーて、次回は、「ち」ですね。ち・・・かぁ。これはまた難しいね。
頑張るぞー。 

2004.11.18希砂羅