「四季折々」

春になれば、暖かい日差しに目を閉じて、桜の匂いに酔いしれる。

そんな季節・・・。 

夏になれば、暑く照らす太陽に顔をしかめ、滲む汗にため息一つ。

そんな季節・・・。

 秋になれば、色づく木々に目元を緩め、その色合いにしばし見とれる。

そんな季節・・・。 

冬になれば、太陽の日差しを受けて輝く雪景色の眩しさに目を細める。

そんな季節・・・。
 

あなたと手をつないで、“それら”を並んで感じられたら・・・なんて、思ってみたり。

 

会えない日々に、一人寂しく涙するのは、もう、嫌だから・・・と思うのは私の勝手。

 

とか、考えていたのは、あなたと結ばれる前の私・・・。

 

今は、こうして、あなたと並んで移り行く四季折々を

肌で感じられる喜びを噛み締めている。

  

「どうした?ぼんやりとして・・・」

彼の声に我に返る。

見上げると、すぐ側に彼の顔。

感じられる彼のぬくもりに、涙が滲む。

彼はそんな私に少し困惑ぎみ。

そんな彼が可笑しくて、笑い出す私に、彼はますます困惑の色を濃くした。

 

「・・・愛しています」

それは魔法の言葉。

どんな事も乗り越えられる、素敵な言葉。

伸ばした手を受け止めてくれる、そんな当たり前が、

私にとっては何よりも幸せなことと・・・彼の瞳に告げる。

見つめ返す瞳に、私はその答えを見つける。

 

「俺も・・・愛している」

 

彼の言葉に、私は溢れる涙を止められなかった・・・。 

Fin

 

 

「あとがき」
今回は、「さ行」の「し」です。
先回の「さ」から随分と日にちが空いてしまいましたが、何とか書けました。
当初、考えていたものと違うものが書けたことに、自分でもびっくりしている次第です。

「四季折々」と、浮かんだものの、それをどうやって小説にしようか、と悩みながら書いてました。
出来上がりは・・・まあまあかな。

さーて、次回は、「す」ですねぇ。
うーむ、何を書こうかなぁ。
2004.11.15希砂羅