「二人掛けのソファ」


とある休日。
部屋には二人だけ。
二人掛けがけのソファ。
ここまでシュチュエーションが整っていれば、あとは、実行のみ。
外はとてもよい天気。
けれど、二人は部屋にいた。
それは、二人きりで時間を過ごしたいから。
そう、互いに思っていると信じて・・・。

リリーナは若干、緊張して、ヒイロの隣に座っていた。
部屋に流れる、静かなBGM。
互いに、お気に入りの雑誌や小説を持ち寄り、二人掛けのソファで。
この日を、どんなに待ちわびていただろうか。
互いに揃って休みを取るのに、どれだけ苦労しただろう。

「ヒイロ」
意を決して、彼の名前を呼ぶ。
彼は読んでいた本から顔を上げ、何だ?とこちらを見つめ返す。
「あの・・・」
手をぎゅっと握り、勇気を出して。
「あ、あの・・・」
「どうした?」
彼は穏やかに瞳を細め、優しい声で問い返す。
「甘えても、いいですか?」
「・・・・・・」
彼はその言葉の意味を考えるように眉を寄せる。
「・・・甘える?」
「せっかく、二人だけの時間を過ごせるのです。だから、二人きりで出来ることを、しませんか?」
「そういう意味か」
彼は小さく息を吐き、持っていた本を机に置く。
「お前の好きなようにすればいい」
「良いのですか?」
「ああ」
「では・・・」
彼との距離を詰め、彼にぴったりと寄り添う。
彼の腕にぎゅっとしがみ付く。
彼が反対の腕を伸ばし、その手で私の頭をそっと撫でる。
しばらく、そのままでいた。
「ずっと、夢みていました。あなたと、こうして過ごせる時間が訪れることを」
「ああ・・・」
「幸せです」
「リリーナ・・・」
名前を呼ばれたので、条件反射のように顔を上げる。
「俺の願いも、聞いてくれるか」
「何でしょうか?」
尋ねると、彼は腕にしがみ付いていた私の腕を解き、体を離す。
拒否されたようで、少し悲しかった。
すると・・・
「俺は、こちらの方が良い」
そう言って、彼は私を正面から抱きしめた。
彼の腕に包まれている。
それだけで、幸せ。


二人掛けのソファ。
二人だけの時間。
それは、甘い時間。

Fin

「あとがき」
甘い話を書きたい!と思って書き始めたんですが、なかなか甘くならないなぁ。昔はもっと書けたのになぁ〜。読む人が読むと甘いのか?どうなんでしょうか?

2006.10.29 希砂羅