「添い寝」

まどろむ。
陽の光の射し込むベッドの上。
暖かな布団に包まれて。
何て心地よい気分。
疲れた体が、心が、幸せで満ちたりてゆく。
コロン、と寝返りを打つ。
その時、自然と伸びた手が、暖かな何かに触れる。
びくっとして慌てて手を引っ込め、目を開けて“それ”を確認する。
と、同時に、その手はぎゅっと握られた。
「俺だ」
落ちた溜め息と、よく知っているその声。
「ヒイロ・・・?」
「ああ」
彼は、ベッドの椅子の側に座り、わたくしの顔を覗き込んでいた。
「いつから・・・。いえ、どうしてここに?」
「急に仕事が休みになった。今日、お前が前から休みだということは知っていたから」
「それで、会いに来てくださったの?」
「一人きりの休みは淋しいと言っていたのはお前だろう」
「・・・・・・」
彼の言葉に、返す言葉も無く、ただ、顔が赤くなる。
「パーガンに部屋で休んでいると聞いて、帰ろうとしたんだが、少しでも顔を出してほしいと頼まれた」
「パーガンがそんなことを?」
「お前が毎日、忙しく動いているのはパーガンもよく知っているからな」
「では、パーガンが引き止めなければ帰ってしまうところでしたのね」
頬を膨らませ、少しむくれてみせる。
「寝ているのを起こすのは悪いと思ってな」
「そんなこと・・・。そんなことに気を使わないでください。どんなに疲れていても、あなたの顔を見れば元気になれるもの」
「リリーナ・・・」
「本当よ?だから・・・。いつだって、会いに来て下さい」
「わかった。極力、そうするよう努力する」
「それは、努力を必要とすることかしら?」
「ああ。少なくとも、俺にとってはな」
「そうなの・・・。いいわ、それでも。会いにきてくださるなら、それだけで、良いの」
「まだ、寝足りないのだろう?俺のことはいいから、寝ろ」
「そう言って、わたくしが寝てしまったら、帰ってしまうのでしょう?」
「・・・分かった」
彼は大袈裟にため息をつくと、もう一度、わたくしの手を握った。
「側にいる。お前が目覚めるまで、側にいてやる」
「それでは、あなたが疲れてしまうわ」
「では、どうしろと?」
「一緒に・・・」
身体を少しベッドの隅に寄せ、布団をめくる。
「一緒に・・・?」
彼が眉間にシワを寄せ、困惑した表情を見せる。
「おい。それはいくらなんでもダメだ。もし、パーガンやお前の母親に見られたら・・・」
「平気です。それに、パーガンもお母様も、あなたとわたくしの仲は知っているわ」
「だからと言って・・・」
「お願い、ヒイロ」
「お願いと言われても・・・」
「一人ではいや」
「お前は小さな子供か。それにな、リリーナ。一緒に横になって、俺がお前に手を出さないという保証はどこにも無いぞ」
「そんなこと、知っているわ。それでも、良いの」
「そういう覚悟はあるんだな」
「ええ」
「・・・分かった」
彼は、勘弁したようにため息を再び落とし、上着を脱ぐと、わたくしの隣に横になった。
その胸に寄り添う。
「・・・幸せ」
ぽつりと零し、目を閉じる。
彼の腕が伸びて、わたくしの背中を包む。

暖かな日差しの降るまどろみの中、彼に抱かれ、わたくしは幸せな夢を見る。


Fin

「あとがき」
うーむ・・・。頑張って終わらせたけど、どうなの?って感じです。とりあえず、甘いけど〜ね〜。久しぶりの新作です。ていうか、今、意識がラルクのライブDVDに向いてしまっているので、あとがきが上手く書けないや(・・・言い訳)。

2006.4.16 希砂羅