The Time Of The Sweetheart

Time:01 ターゲット名;リリーナ・ドーリアン




事件は突然に起こるものだ。
そして、事件は何も新聞に載るものを差すばかりではない。

人の心の中にもまた、事件は起こる。


その日、俺はなかなか寝付けなかった。
とはいっても、いつも寝つきがいいわけではない。
それに、ゆっくり寝ることなど、ここ数年していない。
いや、出来ない、が正しい。
仕事は突然に舞い込んでくる。
朝であろうと夜であろうと関係なく。
いつでも仕事に取り掛かれる体勢でいなければならない。
もちろん、そのためにはコンディションを整えるのも大事だ。
そのバランスが難しい。
最近、ようやく体が慣れてきたところだ。


クシャ。
ポケットにねじ込んだ紙を掴み、取り出して目の前に広げる。
「ターゲット名;リリーナ・ドーリアン」
紙にはそれだけしか書かれていない。

期日は2週間。
その間に、ターゲットの命を奪う。
期日は人物により違う。
期間が短ければ短いほど、簡単に命を奪える相手であることを意味している。

これまで、何人もの命を奪ってきた。
自分の正体を知られることなく。
躊躇うことなく。
一発で仕留めた。

拾われた時から、その手段を身につけ、言われるままにターゲットの命を奪ってきた。
そこに、何の感情も存在はしなかった。
ただ、言われるままに。
命令に従うだけ。

今回も、そうするつもりだった。
相手は女性だ。
いつもより簡単に命を奪える。

しかし・・・。
ターゲットを確認した時、初めて迷った。
自分と年の変わらない、若い女性。
異例の若さで外務次官になり、自分よりも一回りも二回りも年上の者たちと肩を並べ、仕事をこなしている。

依頼主は、彼女と同じ役職に付きながら、彼女のその仕事能力に嫉妬し、疎ましく思っている人物。
彼女が就任する前は、多方のメディアで活躍し、その名を世間に知らしめていた。
それが今は、彼女の活躍により、隅に追いやられ、彼女を妬んでいる。
彼女が消えれば、また自分にも再び世間の目が向けられると思っている。


はぁ。
紙を見つめ、重いため息をつく。

殺したくない。

それは初めて抱く感情だった。

ターゲットを殺し損ねたと知られれば、自分に生きる道はない。
失敗は自分の死を意味している。

だが・・・。

殺したくない。

しかし、どうすればいい?

一緒に逃げる?
それが出来るなら・・・。

そんなことを考える自分を情けなく思う。

女に心を奪われるなど、今までになかったことだ。

だが、どうすればいい?

何度も寝返りを打ち、結局、その夜は一睡も出来なかった。

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「あとがき」
久しぶりに書きます。・・・と思ったら、10日ぶりでした。まぁ、ぶっちゃけ、書きたいものがなかったので、書きませんでした。というのが正直な気持ちです。そろそろヒイリリを書くのも潮時かなぁと考えたりもしました(結構本気で)。
まぁ、今回、こうしてまた新しい話を思いついたので、何とか思いとどまりました。一先ず、ほっとため息。何年も書いていると、書けなくなった時って落ち込みますね、結構。でも、まぁ、今回はそんなに落ち込まなかったです。書けなきゃ書けないでいいや、という思いが強かったので。
 と、話と関係ないことをたくさん書いてしまいました。えー、今回のお話ですが、パラレル?なので、本編とは関係なく(私が書くのはいつも関係ないけど)、ヒイロはガンダムのパイロットではありません。いわゆる、殺し屋ってやつです。リリーナは外務次官という役職でお嬢様という設定なので、そのまんまなのですが。希望としては、いつもみたいなどこか大人びたリリーナではなく、少女らしい、可愛いリリーナを目指したいです。
というわけで、何とか完結まで頑張りたいと思います。

2004.1.22 希砂羅