「言い訳」


組み敷いた細い体を見下ろし、我に返る。
ごくりと唾を飲み込む音が聞こえるほどに、暗い静寂に包まれた、部屋の中。

さて、どうするか。
このまま、シチュエーションに流されて突っ走るか・・・。
それとも・・・止めるべきか。

酔っていた。
言い訳をすれば、ただ、それだけなのだ。
週に一度、彼女の愚痴を肴に、二人で酒を飲む。
それが、恒例になりつつある。
大して酒の強くない彼女も、この日ばかりは酒を飲む。
俺も大して酒が強いわけでないので、二人でボトル一本がせいぜいだが・・・。

この日も、例により、彼女の愚痴に相槌を打ちながら、グラスを傾けていた。
彼女もアルコールと愚痴をぶちまける興奮の両方で、白い肌を赤く染めながら、
それでも、酒を飲むペースを緩めない。
いつもより飲んでいる・・・。
そう自覚しつつも、止めなかった。
いつもなら、当然、グラスを奪ってまでもやめさせるのだが・・・。
明日もオフ。
その誘惑が、彼女と俺に降りかかっていたのかもしれない。
ぼんやりと、乱れた服から覗く鎖骨を見つめていた。
寒気とは違う、ぞくぞくとする感覚を感じつつ。
理性のネジがゆっくりと緩んでいくのを、ぼんやりと感じつつ。

コトン。
彼女が、まだ半分も酒の残るグラスをテーブルに置いた。
とろんとした目を、あらぬ方向へ向けながら・・・。
数秒後、彼女はテーブルに突っ伏していた。
ようは、酔いつぶれたわけである。
そんな彼女を、ぼんやりと見つめる。
突っ伏した拍子に覗いた、淡くピンク色に染まった細い首筋。
その首筋に、触れた。
ただ、それだけ。

そこからは、記憶は途切れ途切れだった。

そして、今に至る。

組み敷かれた相手は、静かな寝息を立て、眠りの中にいる。
空けたボトルは2本。
いつもの2倍。
たぶん、一人一本は飲んでいる。

酒は怖いな・・・と頭の片隅で思いながら、酒に対する嫌悪感が薄いのは、
たぶん、一緒に飲んだ相手によるのかもしれない。

再びアルコールの回り始めた俺の頭の中では、前者へ選択が傾きつつあった。
つまりは、酒の勢いで・・・。
幸い、明日はオフだ。
唇の端に笑みを浮かべ、俺は彼女の首筋に顔を埋めた。
許せ・・・。
飲んだ相手が悪かったと思え。
そう、彼女へ心でつぶやいた。


Fin

「あとがき」
うーん、この話は、ヒイリリに限定しなくても良いかなぁ・・・と読み返しながら思いました。名前出してないしね。まあ、GWの友達が読んだら、ヒイリリでイメージしてしまうとかもしれないけど。それはそれで、読む人の自由ですので。楽しんでいただければ、嬉しいな、と単純に思います。
 お酒、私も弱いです。チューハイをグラス一杯で酔えます。もう簡単です。
でも、お酒を飲むとハイになるから、楽しいですね。涙もろくもなりますが。
 酔いつぶれたリリーナを食っちゃう酔いっぱらいヒイロ。はははー、許せよ、リリーナ。

2004.10.12 希砂羅