「青い鳥〜幸せへの扉〜」

第3話 

彼が泣いている。
暗闇の中、わたくしを見下ろして。
泣いている・・・ように見えた。
薄目を開けて、彼を見つめる。
彼の手が・・・わたくしの首へ伸びる。
不思議と恐怖は無かった。
彼に殺される。
それはとっくの昔に覚悟を決めたこと。
だから、恐怖は無かった。
目を閉じた。
彼がわたくしの存在を消す。
それを幸せと思ってはいけないだろうか・・・?

目を閉じて、その時を待った。
彼の手が首に触れるのを・・・。
けれど、いつまで待ってもその手が首に触れることは無かった。
目を開ける。
そこに彼の姿は無かった。
体を起こして彼を探す。
開いた窓から入った風がカーテンを大きく揺らす。
開け放たれた窓。
まるで、わたくしを誘っているように大きく開いた窓。
ベッドから降りて窓へ寄る。
躊躇することなく窓から身を乗り出して下を見る。
彼はいた。
静かにわたくしを見上げている。
何も言わず、その手を差し伸べることもしない。
ただ、ただ静かにわたくしを見上げている。

“青い鳥”
わたくしの青い鳥。
決して手の届かない、青い鳥。

手を差し伸べても、この腕をいっぱいに伸ばしても、あなたには届かない?
あなたはまた、黙って立ち去るのでしょうか?
無言のさよならを背中で告げて。
想像したら、涙が滲んだ。
何度、同じことを繰り返すのでしょうか?
何度、その悲しい終わりを繰り返すのでしょうか?

だから、走った。
そんな悲しいことは一度きりでいいと。
何度も繰り返して平気でいられるほど、わたくしは強くない。
だから、息を乱して走った。
靴を履くのも忘れ、ただ走った。
ドアを勢いよく開ける。
今が夜中であることなど気にならなかった。
ドアを開けた数メートル先に、彼がいた。
彼は同じ場所に立っていた。
あの静かな瞳で、見つめている。
その瞳に思いっきり微笑って、彼の元へ走った。

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「あとがき」
勢いのまま、第3話。本当に、勢いって大事ですね。突っ走っている感じ。
でも、その勢いのまま、急速に終わりへ向かっているように感じるのは、書いている私だけ・・・?

2005.5.31 希砂羅