「春爛漫 恋爛漫 愛爛漫」




「なぁ、なんでお嬢さん、あいつの側にいるとき、いつもより綺麗に見えるんだろうな」
しみじみとデュオが遠目に2人を見ながら言う。
「愛の力じゃないですか?」
カトルも同じように2人を遠めに見ながら応える。
「愛ねぇ」
デュオが思わず鼻で笑う。
「女の子は恋をすると綺麗になるって言うじゃないですか」
カトルが綺麗な笑顔を浮かべる。
「恋ねぇ・・。あの2人は、単純な恋じゃないさ。2人とも変わり者なんだよ、結局」
カトルは苦笑を浮かべることでそれに応えた。
「単純に言えば、元殺人者と被害者だぜ?それが今は・・・あれだもんなぁ」
デュオの目線の先、話題の2人は仲良く寄り添ってお散歩中。
さすがに腕までは組んでいないが、誰が見ても恋人同士に見える。


「ねぇ、ヒイロ。わたくしのお願い、聞いてくださいます?」
リリーナがヒイロへ少し上目遣いで尋ねる。
「何だ」
「腕を・・・組みたいの」
「腕?」
「そう・・・。駄目?」
ヒイロはしばし思案し、黙ってリリーナに腕を差し出した。
リリーナはにっこり笑うと、その腕に自分の腕を絡めた。


「うわっ。腕組みやがった・・・。おいおい、そんなに見せ付けんなよなぁ。ったく腹の立つ」
「いいじゃないですか。あの2人はたまにしか会えないんだから。たまに会った時くらいはさ」
「・・・そりゃそうだけどよ。・・・ところで、カトル、お前はあの眉毛のお嬢さんとはどうなんだよ」
「眉毛・・・。ドロシーのこと?」
「おお」
「どうって・・・、別にどうでもないけど」
「ふーん・・・」
にやっとデュオが笑みを浮かべる。
「何?デュオ、その笑みは」
「いやいや。何でもねぇ」
デュオはひらひらと手を振ると、その場から離れた。
「どこ行くの?」
「決まってるだろ、“俺の女”のとこ」
「・・・そう。ヒルデさんによろしく」
「おう。じゃあな」
「またね」
カトルはデュオを見送ると、ハーア、とため息を落とした。
「たまには僕から会い行こうかな。忘れられそうだし・・・」
カトルは苦笑を浮かべると、最後にもう1度仲良く歩く2人見つめ、その場を離れた。


「結構歩いたわね」
「あぁ・・・」
「少し疲れてしまいました。あそこのベンチで少し休憩してもいいかしら」
「ああ」
少し歩き、2人は近くのベンチに腰を下ろす。
ふぅーとリリーナが息を吐く。
「無理をするな」
「え?」
「せっかくの休みくらい、おとなしく部屋で休んでいろ」
「こんなにいいお天気なのに?」
リリーナが目を細め、空を仰ぐ。
「空くらい部屋のベランダからでも眺められるだろう」
「そんなのつまらないわ」
リリーナが頬を膨らます。
「それに・・・たまにはあなたともこうしてお散歩したいの」
ふぅーと今度はヒイロが息を吐く。
そんなヒイロをリリーナが頬を膨らませた顔を向ける。。
「また、あきれてるでしょ。でもね、あなたにはくだらないことかもしれないけど、そんな単純なことが、わたくしには幸せなの」
そんなことを言われると、さすがのヒイロも返事に困る。
つっと、リリーナが立ち上がると、ヒイロの前に立った。
「何だ」
と言いかけたヒイロの口は、リリーナの柔らかなそれに塞がれた。
少し触れて、唇は離れた。
その唇をヒイロは見つめる。
ヒイロは腕を伸ばすと、リリーナを強く引き寄せた。
「きゃっ」
リリーナの身体は、ヒイロの膝の上。
「ヒイロ・・・」
その格好が恥ずかしいのか、リリーナは咎めるように赤く染めた顔をヒイロに向けた。
それを待っていたかのように、ヒイロはリリーナの後頭部を掴みその唇を塞いだ。
「んっ・・・」
深く重なる唇。
零れる甘い吐息に最初に溺れるのは果たしてどちらが先か・・・。

それは・・・2人のみが知る。




Fin


「あとがき」
あー、久しぶりに書いた。はい、またセリフから始まりました(苦笑。
デュオ君とカトル君の会話。何か、いい感じ?
最後はやっぱり、ラブラブなお2人で終わりました。この続きは裏行きになりますので、また、今は書く気力もありませんので、書きません(断言)。

2003.5.30 希砂羅