「理由―わけー」




触れた唇に・・・。
言葉を誤魔化すように塞がれた唇に、戸惑いは隠せない。

あの、彼が・・・。
大勢いる人の前で、あんな大胆なことをするなんて。
たとえ、誰も見ていなかったとしても・・・。
まだ、夢を見ているよう。

トクン。
トクン。

あの時の胸の高鳴りを、忘れることなど、出来はしない。

軽く触れただけで、離れた唇。
その唇の感触でさえ、指で唇を触れただけで、すぐに蘇る。
思い出しただけで、頬が熱くなる。
次に逢う時、どんな顔をして逢えばいいのかしら・・・。


自分の行動が信じられない。
自分でも、どうかしていると思う。
なぜ、あんなことをしたのか。
「俺は・・・」
その続きを言えず、思わずとってしまった行動があれだ。
唇が離れた後の、彼女の真っ赤な顔が、今でも頭から離れない。
けれど、怒っている風ではなかった。
と・・・思う。
だが、次に逢う時、どんな顔をして逢えばいいのだろう・・・。


しかし、そんなことを想っている暇もなく、運命の輪はゆっくりと回り続け、二人を再び引き合わせることになる。
それは、事件の始まりでもあった・・・。

Fin



「あとがき」
あー、書けた。もうね、これは3ヶ月近く、途中で放棄したような状態で放置されてました。題名はいっつか前に付けてあったんですけどね。続きをどうしても書けなくて・・・。
えーっと、状況がわかりますでしょうか。この話はですね、ラジオドラマ「BLIND TARGET」のコミック版のラスト近くを見ていただくと、ご理解いただけるかな、と思います。空港(?)で別れるヒイロとリリーナのあの場面です。ヒイロが「俺は・・・」と言った後、取った行動。その後の二人の想い・・・といいますか。ああ、上手く説明できませんが、何となく読み取っていただけると嬉しいです。
わかりにくくてごめんなさい。

2004.9.27 希砂羅