「恋は自惚れ」






「人を好きならないの?」
彼女が、ふとつぶやく。
それは、耳をすまさなければ聞き取れないほどに、小さな声だった。
答えはすぐには出てこなかった。
彼女がその問いをした理由も検討がつかなかった。
だから、聞こえない振りをした。
「・・・わたくしのことを、どう思いますか?」
今度ははっきりと聞こえる声で彼女が言う。
「どう・・・とは?」
「あなたの心の中に、わたくしはいるのかしら。それとも、他の人間と同じレベルの位置にいるの?
興味の無い存在?」
「知りたいのか?」
彼女は少し不安そうな表情を浮かべ、小さく頷いた。
「・・・とても、興味があります」
「そうか・・・」
「わたくしは、きっと自惚れてしまっているから・・・。あなたが、わたくしを特別に大切に想ってくれていると、自惚れてしまっているから・・・。だけど、最近、それが辛いの。答えが無いから・・・」
「・・・自惚れていい」
「え?」
「俺もお前と同じだから・・・。俺もきっと、自惚れている」
「・・・それが、答え・・・?」
「ああ・・・」
「自惚れていてもいいの?」
「ああ」
「だったら、あなたもそのまま、自惚れていて。わたくしがあなたのことを大切に想っているって」
「・・・ああ」

頬を染めた彼女は、いつもより綺麗で眩しかった・・・。


Fin



「あとがき」
ずーっと、長いこと(まあ、数ヶ月だと思いますが)、ネタ帳に入れっぱなしだったのですが、
ようやく続きを書けそうな感じがしたので、書いてみました。
最近、意味のないもの(内容が浅い・・・というのか)ばかり書いています。
何故だろう。ネタ切れ・・・?何だか哀しいなぁ・・・。

2004.9.6 希砂羅