「ため息」





白紙を見つめたまま・・・ため息をつく。
泣き過ぎてヒリヒリと痛む喉が、ため息をつくたびに思い出したように痛む。

『さよなら』

その一言をただ書くために広げた便箋は、涙を吸ってごわごわになった。
新しい便箋を用意する気力を欠いたまま。

『さよなら』

その一言で、彼なら察するだろう。
きっと、問い詰めたりはしない。
素直に受け入れる。
彼のことだもの・・・ね。
そう思ったら、笑えた。
目を赤く腫らしたまま笑う自分の姿を想像したら、滑稽に思えて、また笑えた。

カーテンが揺れる。
窓が開いていたのだろうか。
カーテンが揺れるのをぼんやりと見つめた。

「リリーナ!」

痛い。
体が折れる。

「痛いわ、ヒイロ・・・」
悲鳴に近い声で彼に訴える。

「・・・すまなかった」
彼は素直に謝ったが、腕の力を緩めただけで、手を解いてはくれなかった。
「・・・どうしたの?」
「・・・お前が変な電話をよこしたから心配になって飛んできたんだ」
「・・・・・・」
「死をほのめかすような、そんな言葉を聞いて冷静でいられるわけがない」
「だって・・・。死ぬほど苦しいのよ」
「ああ・・・」
「体が熱くて、頭が痛くて、ふらふらして・・・。立つのがやっとなのよ」
「ああ・・・」
「死ぬんだわ、わたくし」
「違う」
「こんなに苦しいのに?」
「・・・ただの風邪だ」
「嘘よ・・・。そんな優しい嘘はいりません」
「嘘じゃない。今年の風邪はそうなんだ」
顔を上げて彼の顔を見つめる。
「・・・本当?」
「ああ・・・」
「嘘じゃないの?」
「嘘の方がいいのか?」
「・・・嫌ですけど」
「だったら信じろ」
「・・・・・・・はい」
「間が長すぎる」
「だって・・・」
「俺を信じろ」
「ヒイロ・・・」
「俺はお前には誠実なはずだが・・・?」
「・・・そう・・・ね。ふふっ」
「何だ、その笑いは」
「安心したら・・・気が・・・抜けて・・・」
足から力が抜け、彼の腕をすり抜け、床に崩れる。
意識を失う瞬間、彼の大きなため息を聞いた。

Fin






「あとがき」
はははは・・・・。はあ?って感じなお話になりましたね。滑稽ですね。何だろうな、これ。一応、ラブストーリー?なのかしらー?
書いた本人も良くわからないわ。

2004.8.10 希砂羅