「Kiss me」




「ここでキスして」
照れているような、笑っているような、泣いているような。
全てを混ぜ合わせたような複雑な表情を浮かべて。
彼女が言う。

「ここでキスしてくれたら、許してあげます」
許す・・・?
少し首を傾けて、問い返す。
彼女は、今度は怒っているとはっきりと分かる顔で、俺を見つめ返す。
「・・・なぜ、わたくしが怒っているか、わからないのですか?」
わからない。
「本当に?」
ああ。
「わたくしたち、会うのは1ヶ月ぶりですのよ?」
・・・そうだな。
「わたくしだって、1ヶ月のほとんどはお仕事でしたけど、それでも、会える時間は作れましたわ。それなのに、あなたは会いに来てくれない。会う時間さえ、あなたは作ってくださらなかったでしょう?」
唇を少し尖らせ、少し拗ねた顔で。
・・・そんなに俺に会いたかったのか。
そう言うと、彼女は瞬時に顔を赤く染めた。
お前が素直に答えれば、俺も素直になる。
「・・・ずるいわ」
じわりと瞳に涙を浮かべ、彼女が俯く。
その手を引いた。
彼女の体を腕の中に閉じ込める。
驚いたような彼女の瞳。
リリーナ?
答えを促す。
「・・・会いたかった・・・わ」
・・・同感。
「え?今、何て・・・」
お前と同じ答えを言ったまでだ。
「ずるいわ・・・」
そうか?
「・・・駆け引きは、あなたの方がお上手ね」
そのようだな。
「・・・ねぇ、今なら、わたくしの願いを聞き入れてくださる?」
・・・ああ。
「本当ね?」
ああ。
「ヒイロ」
彼女がにっこり笑う。
そして、照れたように笑う彼女が言う。
「・・・ここでキスして」
・・・了解。

Fin





「あとがき」
うん、甘い。
自分で読み返して、照れてしまいました。
最近は、仕事で疲れている・・・を言い訳に、小説を書くことが滅多になくなりました。
まあ、書く内容が無い・・・というのが大きな理由でしょうね。
それほど、今まで書いてきたんだろうなぁ、なんて思ったりします。
これからも、まあ、ゆったりとしたペースで書いていきたいと思います。
これからも、どうかよろしくお願いいたします。

2004.4.29 希砂羅